日本体力医学会

【 日本体力医学会の立場表明 】
新たに策定された健康づくりのための身体活動基準2013・身体活動指針(アクティブガイド)

平成25年5月10日
日本体力医学会理事会
日本体力医学会ガイドライン検討委員会

 平成25年3月18日、厚生労働省健康局より、「健康づくりのための身体活動基準2013」ならびに「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」(以下、基準・指針)が発表された。本基準・指針は、日本体力医学会の会員8名を含む、医学、スポーツ・健康科学、公衆衛生学等の専門家13名の委員による検討の結果、策定されたものである。
 平成18年策定の「健康づくりのための運動基準2006」と比較して改定された点は、以下の通りである。
①名称を「運動基準」から「身体活動基準」にした。このことにより、身体活動の重要性を強調した。
②新たに207本の身体活動・運動疫学に関する原著論文のレビューを追加した。このことにより科学的根拠が強固になった。
③身体活動量、運動量の基準として、前基準の「強度が3メッツ以上の身体活動を23メッツ・時/週行う」ならびに「強度が3メッツ以上の運動を4メッツ・時/週行う」が踏襲された、各々により分かりやすい目安として「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行う」ならびに「息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分行う」が新たに付記された。
④平成25年度から健康日本21(第二次)が始まったのを踏まえ、心筋梗塞や脳卒中等の予防だけでなく、一部のがん、運動器症候群、認知症の予防も視野に入れた。
⑤65歳以上の高齢者を対象に「強度を問わず、身体活動を10メッツ・時/週行う、具体的には横になったままや座ったままにならなければどんな動きでもよいので、身体活動を毎日40分行う」という新たな基準が示された。
⑥身体活動・運動量と健康影響との間の量反応関係に基づき、全ての世代を対象として「今より10分多くからだを動かすこと」が提案された。
⑦生活習慣病患者等に推奨される身体活動量として「3~6メッツの運動を10メッツ・時/週」という基準を参考として示し、保健指導を行う際の運動可否判断や運動指導を実施する際の留意事項を示した。
 新指針は、「+10(プラステン):今より10分多くからだを動かそう」をメインメッセージとし、A4サイズ表裏1枚に分かりやすくまとめられた。一般の人にはなじみにくいエクササイズ(メッツ・時)の単位の代わりに、「+10(プラステン)」から始めて、「元気に体を動かしましょう1日60分!(18~64歳)」あるいは「じっとしていないで1日40分(65歳以上)」を提示し、身体活動や運動を増やすための気付きの工夫がされ、国民向けのメッセージ、情報提供ツールとしての要素を強調した点が改定のポイントである。一方で、新基準と新指針の間に内容の差が大きくなった点に注意が必要である。そのため、身体活動・運動指導を行う際には、指針だけでなく、その元になっている基準を十分に理解した上で運動指導をおこなうことが求められる。
 新基準は、「今後の研究成果の蓄積の状況や、健康日本21(第二次)の中間評価等を踏まえ、5年後を目途にこの新基準を見直すことが望ましい」と結ばれている。本基準の策定に利用した日本人対象の疫学研究は少数であった。世界的には、非感染性疾患(NCD)対策に身体活動の重要度が増しており、国内における身体活動・運動疫学研究を発展させるための環境整備や活動の強化が必要である。
 日本体力医学会は、この度の改定を受けて、新基準・指針を用いて国民の身体活動・運動推進対策を図ることを支持するとともに、本学会の立場として、①学会大会や各種集会を活用し、健康づくりのための身体活動基準・アクティブガイドの内容の普及・啓発を図ること、②今後の基準・指針の改定に資する身体活動・運動および体力に関する質の高い研究の実施と公表を一層支援・推進すること、③これらの学術活動を通じ、国民の身体活動の増加や運動習慣の確立、体力の維持・増進、ひいては健康寿命の延伸と生活の質の向上に貢献すること、を表明する。